2016年8月22日月曜日

「村上海賊の娘」

ども、編集長のルイスです。


「村上海賊の娘」の単行本が出たのが2013年の秋。前作の「のぼうの城」のヒットを受けて、上下巻のこの物語は本屋大賞を受賞し、よう売れました。
それから2年半、早くも文庫版が登場。上下巻は全4巻に分割され、価格もお値打ち価格になって、買い求めやすくなりました。6月に前半の2巻が出て、7月に後半2巻。ここんところ、ずーっと本屋さんの特等席を占拠してます。

舞台は、信長が天下布武を掲げて天下取りに邁進している時代、世に名高い木津川の合戦です。

歴史小説は、歴史の奴隷にならず、歴史を逸脱せず、という厳しい枠組みがあるもんだけど、そのあたりをきちんと踏まえたうえで、骨太のスペクタル絵巻を展開する和田竜の剛腕ぶりは、さすがやと思って読んでました。しかも、真ん中にいるのは、村上水軍。権力者側が設定した士農工商の枠組みの外にいる人たちによる、稗史としての歴史なので、僕的にはどストレートなのですよ。

天正4年、天下統一に乗り出した織田信長が、大坂本願寺を攻め立てていて、一向宗の門徒たちは籠城を余儀なくされていました。そこへ、海路からの支援を乞われた毛利家が、村上海賊に頼ろうとするわけです。一方の織田方では、泉州淡輪の海賊、眞鍋家の若き当主・五三兵衛が初の軍議に臨みます。
海賊衆、一向宗門徒、泉州侍が入り乱れての木津川合戦に突入し、乱世に生きる者たちの合戦劇を描いた物語。スペクタル要素満載なので、映画化必至の作品ですな。

さて、この作品のおもしろいところは、文中、登場する場所に注釈がつくことです。「〜は現在の場所では〜」といった文言が、本文中にちょこちょこ登場します。おかげで、物語に没頭できないなど賛否両論あるけれども、僕は、楽しめました。
大阪在住の人は、現在の場所が書かれてあるほうがわかりやすくていいと思います。

たとえば、

当時の大阪湾の海岸線は、現在よりもよほど内陸にある。木津砦のあった大阪市西成区域がすでに海岸端であった。ちなみに、木津砦より南側は、現在の阪神高速16号線堺線上がほぼ海岸線で、それより西は海である。木津川も現在より短く、木津砦の辺りが河口であった。

というふうに、現在の場所と対比させて書かれている箇所が、たくさんあるのです。

現在の北区界隈も、いくつか出てきます。
ほいで、当時の地形図が巻頭に挟まっているので、これを頭に入れながら物語を読み進めると、よりリアルに感じられます。
当時の中之島の地形、渡辺川(今の大川)、長柄川(今の淀川)の地形なんかも、見てると面白いです。
わずか400年前の中世のころと現在とでは、大阪の地形がずいぶん違うということがわかり、また、島がたくさんあったことなどもわかって、この物語、一粒で二度も三度も楽しめます。