2015年2月2日月曜日

あなたは、つひまぶ「大淀号」掲載「大淀マップ」製作者Quiyoxさんをご存じか?



ども。編集長のルイスです。

雑誌の編集というのは、華やかそうに見えて、じつは地味な作業の連続で、ひとりで頭を抱えながら原稿を書いているなんてのはいいほうで、取材や撮影の日程を調整したり、資料を探したり集めたり、アンケートをつくったり、取材依頼書を書いたり、メールしたり電話したり、取材や撮影が終わったら終わったで、原稿の言いまわしの統一や誤字脱字をひとつずつつぶしていく校正作業、事実関係の確認作業、取材させてもらった人の言いぶんを聞いたりかわしたり、画像の色味の調整、デザイン上なら文字間の調整やらオーバーフローのチェックなどなど、まあ、ジミーな作業のオンパレードだったりします。
基本的には、なにがしかの手配や調整をしているか、間違い探しをしているか、その二点が大半で、地味で地道な作業の連続ですよ、マジで。全然、華やかではない。むかしは、これに電卓とスケールをちまちまと使ってましたが、今はPCがやってくれることが増えました。

とは言っても、もちろん、楽しいことがたくさんあるからこの仕事をやっているわけです。
たとえば、これいいでしょ!ってものを紹介し、たくさんのレスポンスがあったときの歓びは、他に代え難いものがあります。
営業だと会ってもらえない人でも、取材だと、快くお話していただけることも、多々あります。

つひまぶでは年配の方にお話を聞く機会が多く、僕はそこが気に入っています。
僕ももうすぐ50歳になるわけで、この先の身の振りかたについていろいろ考えるわけで、年配の方のお話を聞くと、ああそんなふうに人生を転がしていくやり方もあるのか、と、味わい深いやり方を知ることがあります。
若いころは、自分が生きていく隙間みたいなものをどうやって探してきたのか、切り拓いてきたのか、そんなことに興味があって、そういう人たちによくインタビューしていました。
インタビューしたい人の対象は、そんなふうに、インタビューする側のキャラクターによって、年齢によって、置かれている境遇によって、さまざまに変わっていきます。
だいたい、自分のちょっと先を行っている人に狙いを絞ってインタビューしてきたな。

つひまぶにはもっと若い人も載せてほしい?
僕の趣味に走るな?
知らんがな。
若い人のものが読みたいのなら、どーぞそういう雑誌をご覧くださいませ。
僕は僕が信じるものだけを取材して載せるし、バランスなんてものは、一切考えてないです。
雑誌をつくる側にとって、バランスというのは、「悪」以外のなにものでもないので。
バランスに汲々とすればするほど、凹凸がなくなり、つるんとした味気のないものになってしまいます。
これはもう、なにも言っていないのとおんなじです。ジミーな作業を繰り返して、その挙句になにも言わない、言えないのなら、そんなもんはつくっても仕方がない。なにもつくらないほうが、マシです。
凹凸や傷は、じつはとっても愛しいもので、読んでいて心に残っていくもの、ひっかかるものは、そんなものです。こじゃれた言葉にすると、「フック」というやつですな。

閑話休題。
そうそう、雑誌をつくる楽しさというものはまだあって、まだ世に出ていない才能を紹介する、というものがあります。
昨年の11月末に発刊したつひまぶの最新号「行け!大淀号」では、ビジュアル的な目玉をなににするか考える段になって、イラストマップをつくりたいなと考えたのでした。
正直に告白しておくと、イラストマップをつくりたいというのは単なる口実で、じつは、大淀在住の、奇天烈なイラストを描くQuiyoxさんを誌面に登場させたいというのが先で、その手段として、イラストマップというのを考えたというのが、本当です。

数年前、僕がまだ「大阪市の北区をグルグルめぐるブログ」を1日も休まずにエントリしていたとき、彼からときどきコメントをいただき、そんなことが縁で、彼のブログを拝見するようになったのでした。
まだtwitterもFBもなかった時代だったので、おたがいのブログに、ボソッとコメントを書く程度のやりとり。や、僕は彼のブログにコメント書いたことは…、たぶんなかったな。

そのころ彼は、「愛は『ベロロンムーチョ』」というブログを運営されていて(今はFBに移行したようです)、いや、あのブログに掲載されている彼のイラストの数々は、衝撃だったですわ。
ビョークが好きで、FCバルサが好きで、Y字路や十字路が好きで(ということは横尾忠則が好きで)、大友克洋が好きで…、僕がドンピシャで好きなものと重なっているわけです。これはもう、趣味が一緒だ!わーい!で処理するアイテム群ではないですね。このあたりのものが好きだという人は、(僕にとっては)信用するに値する人だということです。同好の士ではなく、同志的な感覚。僕とおんなじ、こっち側の人やん!という感覚。まあ、わかる人にはわかるとしか言いようのない、選民意識丸出しの感覚ですが、とにかく、そんなわけで、僕のなかでの彼は、そのころから重要人物であり続けていたのでした。

いつぞや、二人して偶然にも歌川国芳の浮世絵に魅せられて、大阪市立美術館へ足を運んでいたことがわかったときには、かなり嬉しかったな。

そういうものも、彼のイラストには入っています。
シュールで、肉感的で、精緻なのに、精緻であればあるほど現実離れしていくような不思議な感覚…。まさに、ビョークや大友克洋ではないですか。歌川国芳のようではないですか。

そのころ、彼がブログに掲載していたイラストは、こんなのです。




いつか一緒に仕事したいなーと、ずっと思っていたのでした。

その機会が訪れたのは、2012年の春のことです。
天神橋筋商店街の3丁目にリサーチの拠点を置く関西大学社会的信頼システム創生センター(関西大学・STEP)と北区の手しごと応援する職人研が恊働し、りそな銀行南森町支店の協力も得て、同銀行のショーウィンドーにて、企画展をおこなったのでした。

天満を舞台にした民話を新たに書き起こし、その民話を通じて、北区の伝統工芸や伝統文化を紹介していくという企画展です。
民話の内容ははしょりますが、テキストだけだとアピールしないので、ここはぜひ、挿絵というか、絵がほしいよね!ということになり、3人の絵師というか絵を描いてくれる人を探す段になって、ここや!と思ったわけです。Quiyoxさんです。

もう覚えていないけど、ネットを通じたブログのコメントではなく、実物のQuiyoxさんと電話で話したりお会いしたりしたのは、このときが最初ではなかったろうか?
いや、そんなことはないな。。。東北の被災地支援のTJWKのイベントにも奥さんと一緒に来てくださったし、それ以前にもたぶん会っていたはずなんだけど、ま、古いことなので覚えてません。いやマジで、最初にお会いしたのは、いつどこでだったんだろうか?まったく覚えてない…(笑)
でも、絵を依頼したのは、このときが初めてです。

そしたらですねー、いやいや、とんでもない代物ができあがってきたのですよ。こちらの期待の3万光年くらい上を行く、とんでもない代物。
まず、1枚ものの絵をお願いしたはずが、なぜか箱絵になっており、箱の中には何枚ものガラスが前後にはまっており、アニメのセルを何枚も重ねたような、とても幻想的で複雑なものができあがってきたのですね。

こんなのです。



この写真だとわかりにくいですが、手前から奥に何枚ものガラスがはめ込まれており、そのガラスには、それぞれに絵を描いた紙を切り抜いたものが任意の位置に貼り付けられており、そのせいで、とても立体的で奥行きのある作品になっています。
もう、変態やん! と、叫んだことを覚えてますわ。無論、これは、最上級の褒め言葉として。

作品の原画は、これ。これは、一枚ものです。原画だけでも凄さが伝わってきますが、それをですね、さらに分解して、箱絵にしてしまってるんです。

もうね、こんな才能の持ち主が、なんでこれで食っていないのか、不思議でならんのですよ。彼の本職は、絵を描くことではないのです。






次に接触したのは、2013年だったかな。
2013年のとある日、彼から、個展のお知らせが来たのでした。
これがねー、完全にノックアウトされたというか、Quiyoxワールド全開の、精緻また精緻、描き込めば描き込むほどシュールになるという、なんというかクールな作品になっているのですよ。

たとえば、細野晴臣さんがつくった「トロピカル・ダンディー」を聴くと、譜面上ではどこをどう切っても南国やニューオリンズの音楽のはずなのに、どういうわけかそのものの音楽にはならず、東京から見た彼の地の音楽、という、都市生活者としての細野さんのフィルターがかかったものになっていて、とても無国籍なムードを漂わせる音楽として聞こえてきます。細野フィルターを通して、ある種の翻訳を経たものになっているわけです。

Quiyoxさんの作品にも、それと、同種のフィルターを感じるのですね。
バルセローナを描く、パリを描く、ミラノを描く。Quiyoxさんは、実際にそれらの土地に足を運び、そのうえで描かれる。
おそらく、道や広場の位置など、地図さながらの正確さで、大半が描かれています。
でもそれは、あくまで、日本人の旅行者であるQuiyoxさんの網膜に映った映像がさらに彼の脳内で変換されて、ある係数が乗算されてできた作品です。
どんな係数が乗算されているのかというと、それはおそらく、Quiyoxさんが幼いころから絵ハガキやテレビを通じて憧れてきた、あの、外国の風景です。あの、遠い異国へ憧れ続けてきた、その思い、憧れが乗算されています。
その「憧れ」はどこにも着地しないようなもので、そこには錯覚も誤解もあるだろうし、都合よく肥大されたり消去されたりしたものもあるでしょう。つまり、Quiyoxのパリであり、ミラノであり、バルセローナであり、どこにもない場所、Quiyoxの頭のなかにしか存在しない場所としての、パリであり、ミラノであり、バルセローナです。





つひまぶの大淀号をつくる段になって、大淀在住でもあるQuiyoxさんを引っぱり出さない手はありませんでした。
これでやっと、彼を世に問える!と、雑誌編集者冥利に尽きる瞬間が、ここに訪れたのでした。
たいした打ち合わせはしていません。たいしたリクエストも出していません。あの、パリやミラノやバルセローナのかんじで。それだけでじゅーぶんです。やりたいようにやってくれ、と。
大淀に住んでいるとはいえ、彼ならきっと、彼の頭のなかにしか存在しない大淀を描いてくれるはずです。
それはナマの大淀ではなく、彼なりのフィルターを通過した、どこかクールな大淀です。
僕がほしかったのは、そのような作品で、そのような大淀マップだったのでした。
おまけに、ヨドロン・マドロンなる、じつに愛くるしい大淀キャラまで勝手につくってしまう始末です。

つひまぶ号の最終ページにある「編集後記」に書かれていることだけど、編集部のメンバーにとって、大淀は、「異国」でした。だって、知らないんだもん。大慌てで勉強し、何度も足を運び、つくった号です。足りないところもたくさんあるに違いない、でもこれが今の僕らのせいいっぱい、という「大淀号」です。
そんな僕らだから、血肉化したナマの大淀を載せることなどできません。それをすれば、嘘になります。僕らが見て脳内に定着させた大淀は、そこに住む人たちにとっての大淀ではなく、天満や梅田を根城にする僕たちが遥々視線を向けた先に見た「大淀」です。絵ハガキで見る、「大淀」です。
この号は、大淀から近くて遠い僕らが、「あなたたちはなんにもない場所だと言うけれども、隣から見た僕たちの目には、こんなにも素敵な大淀が見えます」と、僕たちが見た大淀の魅力を、大淀に住む人々に向けて、おずおずと差し出している号です。

Quiyoxさんは大淀在住ではあるけれども、きっと、僕らにとっての「大淀」がフィルターがかかったものであるのとおなじように、彼なりのフィルターをかけた「大淀」を描いてくれるはずだと、僕には確信がありました。
彼が、自身の裡に持つフィルターに自覚的だからです。絵における彼の最大の資質は、それだと僕は思っています。

彼の作品を見るたび何度か経験してきた衝撃は、今回も繰り返されました。
Quiyoxさんは、そのような僕らの狙いをはるかに超えた、とんでもない作品を描いてくれました。
鳥となって俯瞰する風景からは、虫眼鏡でも見えないミクロな世界まで、声、匂い、空気、思い、過去、未来…、描き込まれるもの時空を超え、森羅万象に及び、曼荼羅となります。
そう、これは曼荼羅であり、彼の世界観そのものであり、大淀という枠を超えて、独立した作品として存在し、屹立しているものです。
彼は、年齢を重ねると視力がめっきり低下するけど、そのぶん、見えないものが見えるようになってきますね、と、あるとき僕に言ったことがありました。この作品は、そのような眼を持つ人がつくった作品だと、僕は思っています。
そのような作品をつひまぶに掲載することができ、彼を紹介することができたことは、ほんま、編集者冥利に尽きますね。

おかげさんで、この大淀マップは、どこへ行っても大絶賛されています。
あなたはもう、衝撃を受けましたか? 開いた口が塞がりませんでしたか? 気づいたら何時間もこの大淀マップを見続けていませんでしたか?
かなり審美眼の厳しい人が絶賛してくれたと聞いたときも、自分のことのように嬉しかったですね。

さて、その彼が、このたび、個展を開催します。



2015.2.5(木)→3.3(火)
「Beans Cafe & Gallery 片岡」
大阪市中央区谷町7-2-2 大福ビル1F
google map
平日/11:00~20:00 土・日・祝/12:00〜20:00
毎週水曜、第4木曜休み
→ FBページ

空堀の商店街の一角にあるお店やそうです。
お店のコーヒーとお母さんが、ちょうどいい具合に炊いてくれた「あずき」たっぷりのぜんざいがええんやそうです。

案内のポストカードにも掲載されているけれども、つひまぶで掲載した大淀マップはモノクロですが、どうやらフルカラー版が展示されるようです。さらに、英語版もある模様。
ぜひ、彼の作品の実物をご覧ください。ナマに触れてみてください。なんぼでも見ていられます。
とんでもないですから。

→ QuiyoxさんのHP(http://quiyox.com)は現在鋭意作成中
→ FBページ



つひまぶの「大淀号」をご覧になりたい方は、
デジタルブック(PCのみ)
PDF版

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